せっちも 徒然雑記

50代半ばの全然不惑じゃない道楽親父が、思い付いたことをただ徒然記するブログです。

還暦からのローファー考 part4.… “ワクワク感が大切” Alden 986

 今回、私が現在所有する最後のローファーを紹介することになりますが、実は今回の靴を記事にすることについて迷っていたのです。

 還暦からのローファー…というテーマには、私たち世代が特に影響を受け、好んで履いてきたモデルのローファーたちを、これからの時代にも、世代の個性としてカッコよく履いていけたらいいなという想いから書いてきました。

 先日、知り合いから、たくさんローファーを所有するくらいなら、コードバンの上質なローファーを一足持っていた方がいいんじゃないの?といった意見をいただきました。

 実はすでにオールデンのコードバンローファーを持っていて、特別な時のための滅多に履かない靴なのですが、なんか自慢しているみたいに聞こえちゃうかなと考えてしまって言うことができず、ちょっと気まずさを感じてしまいました。

 ガラスレザーであろうとコードバンであろうと値段に関係なく好きなものは好きなのですが、昨今のコードバン不足を受けたものすごい価格の高騰は、ちょっと気軽に履けない一部のマニア向けといったイメージも強く、ブログのテーマに沿わないのかなと考えてしまったのです。

 私が20代後半当時のファッション雑誌で多く取り上げられ、とにかく高額で簡単に手を出せない靴だけど、いつかは履いてみたいと憧れ、やっとの想いで購入して大切に何度も修理しながらも履いてきたオールデンのコードバンローファー…。

 私たち世代の憧れの的…、ある意味で象徴的な靴だと考え直し、今回記事を書くことにしました。

 コードバン イコール オールデンといっても過言ではないオールデンのペニーローファー…、品番986を紹介します。

 Alden 986

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 986はオールデン社が所有する数あるラスト(木型)の内、ヴァンラストと呼ばれるもので作られるコードバン革のペニーローファーで、オールデン社ではレジャーモカシンと名付けられており、末尾の6はバーガンディ色を表しています。

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 現在コードバンを鞣すことができるタンナー(製革業)は、世界に3社しかないといわれており、そのうちの1社が日本の兵庫県にある会社“新喜皮革”であることは、日本人として誇らしく感じますが、オールデン社に供給しているのは、コードバンの中でも最高峰と称されるシェルコードバンを精製するアメリカ シカゴにあるホーウイン社です。

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 コードバンは馬のお尻の皮を使って作られますが、お尻の小さいサラブレッドなどの競走馬では必要な大きさの皮が摂れず主に農耕馬から採取されます。

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 しかし機械化による農耕馬の減少がその希少性に繋がり、コードバンの価格高騰の原因になったといわれています。

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 昔、床屋などで見かけたカミソリを研ぐ革砥の製造を主業としていたホーウイン社が、使い捨てヒゲ剃りなどが普及したことで一気に需要が減り経営危機に陥った時、オールデン社からの高級靴用革のオファーに救われたことから、コードバン不足の現況下でもオールデン社へ優先的に安定した供給がなされ、コードバンのオールデンといったイメージをさらに強くしている要因となっています。

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 アッパーのモカ縫い部は革の合わせ縫いではなく、独特のスキンステッチと呼ばれる手法で手縫いされており、硬いコードバンをスキンステッチできる高度な技術を有する職人は、現在オールデン社に4名ほどしかいないといわれています。

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 私が所有するローファーの中で、唯一グットイヤーウエルト製法が取り入れられたソールは、コバ部が大きく張り出していて存在感は群を抜くものがあります。

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 革のダイヤモンドと呼ばれるコードバン…、とにかく取り扱いが大変なんです。

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 丈夫だけど傷が付きやすく、雨の日にはすぐに水シミができてしまうので絶対に履けません。

 コードバン好きな人には、常に天気予報をチェックするなんて人もいるくらいです。

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 原石を磨いて初めて輝くダイヤモンドのように、手を施すほどに独特の輝きを放つコードバン…、靴磨きが本当に楽しくなります。

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 革の表面を削り出して、バックスキンやヌバックのように銀面が無く、硬く丈夫とされるコードバンは履き皺も独特の大きなうねりを打つようにでき、手入れを怠ると皺の部分から白っぽく毛羽立ちが目立ち始め、光沢もなくなり見るも無惨な靴になってしまうんです。

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 しかし、しっかりと手入れが行き届いて、波打つ水面にように輝く履き皺ができてエイジングの進んだコードバンの靴は、実際に足を入れて履いてみると、他の革靴とは次元の違うカッコ良さがあります。

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 大切に手入れをしてこそ価値がある、履く人を映す鏡のような靴…、

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 街中で手入れの行き届いたピッカピカのコードバンの靴を履いた人を見かけると、それだけでその人柄や生き方すら感じさせてしまうなんて、やっぱりコードバンの靴は特別なんだと思わずにいられません。

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 存在感が強く、いかにもな感じもあるコードバンのオールデンは履く機会も限られ、靴磨きをしながら部屋で眺めて過ごす時間の方が長いのですが、今日こそ履きたいという特別な日には、その前日から気持ちが高揚しワクワクしながら磨き直しをしたりするんです。

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 こんなワクワクする気持ちをいつまでも大切にしていきたい…、還暦を迎えて以降の人生を今までと変わらず楽しく充実させるためにも、きっと大切で必要なことの一つなんだと思うんです。😌