せっちも 徒然雑記

50代半ばの全然不惑じゃない道楽親父が、思い付いたことをただ徒然記するブログです。

還暦からのローファー考 part3… “メイド イン メイン” Rancourt&co loafers

 2回にわたって、還暦を迎えた大人が履くローファーについて、私なりの考えを書いてきました。

 ネットなどで「還暦」「ローファー」などのキーワードで検索すると、履きやすさや足の健康に特化したウォーキングシューズのようなアイテムがヒットすることが多いのですが、普遍的な定番アイテムであり、ほとんどの方が一度は足を通したことがある靴だからこそ、自分の人生を振り返り、こだわりを持って履きたいと考えて今記事を書いてきました。

 小学生高学年くらいから父親や叔父の影響で釣りに夢中になっていた私は、高校入学後に当時では珍しいルアーフィッシングをやっていた友人と出会い、海外の釣り事情に興味を持ち、情報収集のために銀座あたりの洋書を扱う書店に足繁く通うようになります。

 そこでわかったことの一つが、とてつもなく広い国土を有するアメリカは、そのほとんどがいわゆる「広大な田舎」であることから、メールオーダーが一般的に普及しており、釣り道具はもとより、アウトドア用品、服や靴、日用雑貨までもが通信販売が当たり前な環境にあり、メインハンティングシューズやトートバックなどで有名なL.L.ビーンを知ることになります。

 趣味の狩猟中、湿地帯のブッシュに隠れていた切り株を踏み、足を痛めてしまった創始者レオン.レオンウッド.ビーン氏が考案したとされるメインハンティングシューズの製造販売から始まり、その後アウトドア用品を中心にカタログ販売 メールオーダーで大きく成長することになったL.L.ビーンのカタログを取り寄せ、掲載されたアウトドアグッツや服飾、家具などの日用品に至るまで、飽きもせず眺めては夢を膨らませていました。

 当時封切られた映画「ディア ハンター」の劇中で、ロバート デ ニーロが着用していたマウンテンパーカーやワークブーツへの憧れもあり、釣り道具以上にアウトドア関連の服飾や靴に関心を持つようになっていったのです。

 メイン州に拠点を置くL.L.ビーンのカタログに掲載された商品は、いずれもちょっと田舎臭くて、洗練されたものとはいえないものばかりでしたが、高度成長期の日本全てがそうであったように、常にアメリカの影響を受けて育った私には、実用性、機能性、合理性に特化したこれらの商品群に、ある種のカッコ良さを覚え、アメリカの陽の光や風、香りさえ感じられるように思えたのです。

 高校に入学して初めての革靴として、リーガルのローファーを通学用に履いていた私は、L.L.ビーンのカタログに掲載された無骨で、でも履きやすく、なによりも丈夫そうな、茶色のオイルドレザーのローファーに魅入られてしまいます。

 私のローファーに限らず、靴全般に対する価値観は、この時期に方向性が定まってしまったものと思います。

 以前にも書きましたが、アメリカに限らず先進国と呼ばれる国々は、いずれも「物作りの国」、工業製品生産国、熟練した職工を多く生み出す環境にある国という側面があります。

 私達日本人に手作り製品に価値を見い出す傾向が強いのも、日本が元来「物作りの国」として繁栄してきた歴史があるからに他ありません。

 L.L.ビーンのカタログに掲載された手作り感のある商品群に魅せられるのも、おそらく深層心理的に共鳴できるところがあったんだと思います。

 当時、若い世代の支持を得ていた作家 片岡義男さんが、ファッション雑誌にL.L.ビーンを紹介したコラムを読んだことがありますが、細部に至るディテールに注視し、丈夫さ故に長く使用することで得られる何ものに変えられない愛着といった内容に、とてもワクワクし共感すらも覚えたものでした。

 前に紹介したラルフローレンのメダリオンローファーに強く惹かれるのも、都会的なセンスの良さの中に、L.L.ビーンに共通するアメリメイン州製靴特有の、どこか牧歌的で職工の良心のようなものが感じられるからだと思っています。

 以前にも記しましたが、ラルフローレンのローファーを探している過程で、当時のラルフローレンの自信作であったメダリオン装飾のあるローファーには、基本的なデザインは同じでも、ポロやカントリーなどのラルフローレンのブランド展開に合わせた様々なモデルが存在し、その中でも特に上位モデルは、ランコートという会社が請け負って製作され、さらには別注モデルさえも存在していたことを知りました。

 コールハーンの靴職人であったランコート氏が独立し、親子3代にわたって、メイン州での良質な靴づくりにこだわり、特にモカシン系の靴はあのオールデンと双璧を成すほどのシューズファクトリーで、ラルフローレンを始めブルックスブラザーズ、アレンエドモンズ、レッドウイングなどの数多く大手ブランドのOEMを手掛けてきたことでも知られています。

 ネットでラルフローレン別注モデルの写真を見て、その手作り感満載の質実剛健な作りと、これぞメイド イン "メイン"といった雰囲気に、どうしても手に入れて履いてみたいという衝動が抑えきれなくなってしまったのです。

 そのような経緯を経て、今ではすっかり大ファンになってしまったランコート社製のローファー達を紹介します。

Rancout & co  loafers

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  最初はいかにもランコートらしい、タンナー(製革業)で有名なホーウィン社のクロムエクセルと名付けられた上質な革を使用したビーフロールローファーです。

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 前にも書きましたが、ビーフロールタイプのローファーに苦手意識があるために、ほとんど履いたことがなかったのですが、このローファーだけは如何にもランコートらしい風貌が垣間みれることから、意を決して購入したものです。

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 オイルドレザー特有の風合は、とかく学生靴のイメージが強いビーフロールローファーでも、大人の余裕のような雰囲気を醸し出しています。

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 それにしても巻貝みたいにごっついビーフロールですw。

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 クロムエクセルと呼ばれる上質なオイルドレザーは、裏側から指で押すとアッパーの色が薄く変わるなどの特徴があり、履いた時に足の形に合わせた絶妙な色味と風合いを演出してくれます。

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 こちらは柔らかい良質なカーフレザーを使用したホースビットローファーです。

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 とにかくメイド イン メインにこだわるランコート社製の靴には、必ず「Made in Maine (U.S.A)」の刻印が入れられており、それは他州どころか他国に拠点を置く他社OEM製品も例外ではありません(笑。

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 コールハーンやラルフローレンなどと比較すると、デザイン性よりも履き心地や丈夫さを優先した靴づくりをしていることは、コールハーンのビットローファーと並べてみると良くわかります。

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 小さく控えめなビット金具にも、見た目よりも実用性といった、ランコートらしさが現れているような気がします。

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 ハンドソーンによる良質な革を使用したしっかりとした作りは、当然大量生産にはいたらず、国内ではビームスユナイテッドアローズなどのセレクトショップが別注したものがわずかに流通しているだけであることから、当然高めの値が付く傾向にありますが、その分長く使うことで何ものにも変え難い愛着を提供していきたい、なんとも職人らしい良心が感じられる靴作りには、ランコートを所有する歓びさえも覚えてしまいます。

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 タッセルローファーです。

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 本来フォーマルな装いのタッセル付きローファーですが、ランコートにかかるとここまでゴッつくハードな感じになってしまいます。

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 ビットローファーもそうですが、本来ドレッシーなはずの靴が、なぜだか踵に余計な?キッカーバックをあしらってしまい、さらに無骨な雰囲気を醸し出しちゃうところが、私的にはランコートの面白くも好きなところであります(笑。

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 後日に紹介記事を書く予定をしている靴で、レンジャーモック(撮影時に私が履いている靴です。)と呼ばれる類いのワークシューズがありますが、ドレッシーどころか、どちらかというとそれに近く、デッキシューズを始めとしたモカシンタイプの靴に良くみられる、履き口周りに配された革のレースは、タッセルローファーにも良くみられる意匠ですが、革レースを通す穴口に、あえて金属製のハドメを施し、ヘビーデューティな雰囲気に仕上げられているところが、とにかくたまらないのです。

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 レンジャーの訳をネット検索すると、最初に国境警備隊や森林警備隊と出てきますが、まさしく森林警備隊員が、熊などに備えて重いライフル銃を背負い、森林奥深くまで道なき道を入って行く過酷な仕事の後、行きつけの幼馴染達が集う、密かに想いを寄せている女性が営むダイナーに行き、ビールで一日の疲れを癒す、そんな時にほんの少しカッコつけて履いていきたくなるような靴です(笑。

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 最後は以前の記事で紹介したラルフローレン別注のメダリオン装飾の入ったペニーローファーです。

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 80年代後半から90年代にかけてラルフローレンから発売されていたメダリオン装飾が施されたモデルですが、前記事にもあるように私的にツボにハマったデザインなんです。

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 おそらくリリース初期の頃のいくつかは、ランコート社がOEMを請け負い生産され、人気商品であったことから、その後も様々なメーカーが委託を受けて「POLO」ブランドから世に出ていたことは、同じモデルに日本製も存在したことからも推測されます。

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 今回紹介のモデルは、廉価ブランド名「POLO」が付かない、ラルフローレン名義でランコート社に別注されたものです。

 本家ラルフローレン名義で世に出たローファーですから、より上質なカーフ革が使われており、履き口周りにも精細なメダリオン装飾が追加され、いかにもハンドソーンと言わんばかりの丁寧な作りと存在感は、ラルフローレンとランコート社の意気込みすら感じられます。

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 国内での流通は無かったことから、本国アメリカで買い付けられたものが、時折ネットに上がるくらいの希少価値のあるローファーで、ようやく見つけて購入できたものの、入手先の古物商が表記したサイズに間違いがあり、残念ながら私には大きすぎて履けないんです(泣。

 しかし実際に現物を手にして、手入れを施しながらその上質な作りを感嘆の想いをもって眺めるほどに、いよいよ手放すことができなくなってしまいました(笑。

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 以上、現在まで私の所有してきたランコートのローファー達でした。

 沢山ローファーを持っていても、実際の出番は1年に数回あるかどうか、中にはまるっきり履かない靴もあるんです。

 それでもその時の気分やTPOに合わせて必ず履きたい時がくる‥、いざという時に困らないように持っておきたい、そんな想いで買い集めいつの間にかに増えてしまったのです。

 普段は歩きやすさや足の健康を考えてスニーカーが多い私ですが、還暦を迎え、さらには定年を迎えた以降は、きっとこれらのローファー達に足を通す機会が増えるでしょう。

 お気に入りで大切に保管してきたこれらのローファーたちを、ピッカピカに手入れをして履いて出かける時は、いつも以上に背筋が伸び、ある種の緊張感を覚えるのですが、きっとそういうことが大切なんだと思います。

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 生きてきた時代を反映する私たち世代のアイデンティティ‥、それらに裏付けされたこだわりを如何に現代に取り入れていくか‥、これから少しでも家内や娘から恥ずかしいと思われない、「カッコいいおじいさん」と云われるようになるためのテーマの一つだと考えています。