突然ですが、チャールズパッチってご存知ですか?
かの英国チャールズ国王が、皇太子時代にお召しになられていた革靴の甲部分にできた破れやヒビ割れに、当て革を縫い付けるなどの補修を施して長く大切に履いていたことに由来する靴の修理法で、まさしく「物を大切に長く使い続ける」という英国紳士的価値観が伺える素晴らしいエピソードなんです。
高級時計や宝飾品の類いとは違い、どんなに高価な靴でも生活に欠かせない必需品的側面が強く、経年変化 劣化のスピードが早く避けられないのですが、だからこそ靴には履く人の「人と成り」がより鮮明に表れるのではないかと思います。
年に数回は靴の修理屋さんのお世話になることは、以前紹介したレッドウィングのワークブーツの記事などで書いてきましたが、お店によって得意不得意があるらしく、オールデンのような高級靴は断られることもしばしばあるんです。
高価な靴の修理やタッセルなどを作り直すなどの難しい注文にも応えて頂ける高い技術を有するお店となるとお値段もそこそこ高くなってしまいますので、「餅は餅屋」と使い分けてお願いしているのですが、そんなお店で時折見かけるのがチャールズパッチを施したツギハギの有る靴なのです。
コードバンという素材は非常に丈夫で、履く人ごとに形状記憶に優れた特有の履きシワができることから、コルクが敷き詰められたソールの沈み込みと相まって、長く履けば履くほど心地良い自分だけの靴に仕上がって行きます。
しかし特殊な革であるコードバンは繊維質であることから、特に負荷のかかる靴の部位でしばしば裂けてしまうことがあるのです。
今回紹介する1339チャッカブーツも羽根の付け根のカンヌキと呼ばれる特に負荷のかかる部位が裂けてしまうことが様々なブログでも報告されており、ある意味宿命みたいなものと考えていたのですが、ついに私の1339にも小さな亀裂が一気に延びてきてしまったため、以前ローファーの986のサドル部の裂けの補修と補強をお願いしたことのあるユニオンワークス銀座店さんに持ち込み、合わせてシューレースの交換と初めてプロの手による靴磨きをお願いしたのです。
鏡面磨きはせず自然なコードバンの良さを引き出して欲しいとのわがままにも応えて頂き、見違えるように復活した 色番号8ダークバーガンディ シェルコードバンのチャッカブーツ、オールデン1339を紹介します。
Alden 1339

数あるオールデンの靴の中でも、ブーツタイプの中では常に人気上位に挙げられる代表作です。

つま先に何も装飾の無い所謂プレーントゥで、羽根が2アイレットのくるぶし丈のブーツですので、前回紹介したモンクストラップ1878以上に甲を覆うアッパー部分の面積が広いことから履きシワがダイナミックに入ることで知られた靴なんです。

今回裂け補修した跡です。

現在所有しているシェルコードバンのラウンド形状のプレーントゥ3足を見比べると、甲の面積によってシワの入り方に明らかな違いがみられます。

繋ぎ目のない贅沢な一枚革のオックスフォード990とは違い1339はブーツですので、くるぶしまで覆うコードバンはより質感を堪能することができると思います。

オールデンはラスト形状やオックスフォード、ローファー、ブーツなどの靴種の違いから、必ずしも全てにオールデン純正のシューツリーが合っているとは思えず、その靴ごとに変えており、伝統的なバリーラストやアバディーンラストにはさすがに純正のシューツリーがピッタリですが、モデファイドラストの捩れるような特殊な形状には、純正ではしっくりこないことから前後で多少捩れるシューツリーを探し出して使用しています。

同じバリーラストでも1339だけはブーツで甲の面積が広いため少しでも甲の部分にテンションをかけてシワを伸ばして手入れをしたいことからあえて安価なバネ式のシューツリーを使っているんです。

ワックスを重ねた鏡面仕上げではないはずですが、さすがはプロの手による靴磨きは鏡面仕上げと見間違えるような出来栄えで、夏場であるにもかかわらず履きたい衝動を抑えきれず、ちょっとだけ近所への買い物の時に履いていったのです。

ほんの少しの着用時間でしたが、履いてすぐに履きシワ部分が白くなってしまい、綺麗に磨き上げられたコードバンだからこそ余計に目立ってしまうようになってしまいました。
少しガッカリしたのですが、夏場の眩しい日差しに照らされて、毛羽立ちから白く見えるシワの部分がキラキラしていることに気が付き、改めてシワも含めてコードバンの靴を楽しむとはこういうことなんだと改めて感嘆させられたのです。


シワの抑揚に合わせて磨き上げられた部分とシワの谷が白く毛羽立ちキラキラしている部分のコントラスト…


見る角度でいろんな表情を見せてくれる様は、まるで万華鏡のようです。

「革が裂けてしまう」「一旦入ったシワはいくら伸ばしても元には戻らない」「どんなに磨いても履けば直ぐに白いシワが現れる」「雨に弱く直ぐシミになる」コードバン靴の宿命みたいなものですが、これらをすべて受け入れてこそ得られるのがコードバン靴を履く喜び、だなんてまるで人生訓のようですね。

これからも修理を繰り返しながら少しでも長く残りの人生を共にしたいと思わせる靴に出会えたことへの感謝…

あっ!もちろんかみさんのことだって、良いところ悪いところ含めてすべて受け入れ感謝至極なんですよ!だなんていったら、靴と一緒にするな!って怒られそうで、戦々恐々にコソコソとブログ記事を書いている恐妻家のせっちもです(^.^;)









































