せっちも 徒然雑記

50代半ばの全然不惑じゃない道楽親父が、思い付いたことをただ徒然記するブログです。

ラグビーワールドカップ日本大会に想うこと‥

 一昨日ラグビーワールドカップ日本大会が、南アフリカニュージーランドオールブラックス)に並ぶ最多3度目の優勝で終焉しました。

 今大会が世界中の関係者からの評価が高く、大成功裏に終えたことは選手はもちろん全ての関係者やボランティア、世界中のサポーターの力があってのことと思います。

 私自身もラグビーをやっていましたが、甥が大学迄ラグビー(高校時には花園大会に出場)をやっており、子供以上にラグビーに傾倒している熊本に住むその両親(義兄と義姉)に至っては夫婦でボランティアに参加していました。

 しかし今大会の成功はそれだけではないように思います。

 今日はラグビーを経験してきた視点から、自身の考えを書いてみたいと思います。

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 南アフリカイングランドの決勝戦を観ていた時、ふと気付かされたことがありました。

 それは試合後の表彰式でのことです。

 先に準優勝チームのイングランドがメダルを授与されるのですが、一部にメダルを首にかけられることを拒む、又はかけられた直後に外す選手がいました。

 肌の黒い選手達ですが、でも明らかに南太平洋諸国出身の選手にはそのような行為は見られませんでした。

 南アフリカは当然優勝国ですから、そのような選手は肌の色の違いはあっても皆無でしたが、もしメダルを首にかけられる行為を、植民地政策が当たり前だった時代の奴隷に首輪をかける行為とオーバラップしたことによるものではなかったかと考えてしまいました。

 メダルを選手の首にかけていたのは初老の白人男性です。

 本来でしたら、つい最近の1994年迄、あの悪しき政策アパルトヘイトが敷かれていた南アフリカの選手こそ複雑な想いを持つであろうと思いますが、直後の南アフリカチーム初の黒人主将シヤ・コリシ選手の、今迄色々あったが、過去を教訓として前を向いて生きていこう!それを後世に受け継いで明るい未来をみんなで築こう!といった強い意志が感じられる内容のインタビューに目が醒める思いでした。

 ラグビーについてその精神性を表現する際に「One for All.All for One(一人はみんなの為に、皆んなは一つの目的の為に)」という言葉が使われますが、「紳士のスポーツ」と呼ばれることにこそラグビーの真髄があるように思います。

 数多あるスポーツの中でイギリス発祥のラグビーというスポーツだけは、イギリス代表ではなく、イングランドスコットランドウェールズアイルランドと旧覇権国に分かれての戦いになり、その伝統で有名なラグビーの大会、五カ国対抗ラグビーはそこにフランスが入ります。

 旧覇権国同士の名誉を賭けた戦い、だからホスト国の王室は勿論、英国王室など各国の王室が観戦に来るのです。

 ラグビーが盛んな国は、日本以外は、旧覇権国、もしくはイギリスの植民地、又は近隣の影響を受けた国が大半になります。

 旧覇権国の歴史を紐解くと当然覇権国間での争いがありました。しかしお互いを滅ぼし合うことは自国の滅亡に繋がることを経験的に知ることとなり、その矛先を別の国に向けるようになります。

 あまり好きな表現ではありませんが、先進国と途上国がありますが、先進国になり得る為には経済的発展が不可欠です。

 富国強兵という言葉がありますが、過去から現在に至るまで、いつの時代でも軍備が一番お金が掛かります。経済的強国、イコール軍事強国であることはお判りかと思います。

 経済的強国とは、最終的には需要国ではなく、供給国つまり 物づくりの文化が醸成した国であり、文化・歴史が継続しないと本当の意味での経済的強国になり得ないと考えられます。

 アメリカなどの発展は、新大陸への移民が文化を含めてのものであり、直接的にイギリスの産業革命の影響を受けてのものです。

 以前にアメリカ国民にプロテスタントが多いことを記しましたが、ヨーロッパ諸国に於いては、イギリスがプロテスタントの多い国であることを踏まえると、アメリカの経済発展の潜在的背景は自明であると考えられます。

 旧覇権国と日本、及びその他物づくりの文化が継承できた国を先進国と位置付けると、途上国はどのような国かは自ずと判ると思います。

 途上国でも歴史を有している国は数多ありますが、その多くは極端な個人主義全体主義専制による弾圧等で都度文化面での歴史が分断されてきたと考えられます。

 娘が受験生であった時、歴史の勉強に際して日本史と世界史を同じ視点で見るべきではないことを教示しました。

 なぜなら世界史は常に侵略の歴史であり、その都度侵略された側の築かれた文化や文明、言語に至るまでが壊滅・寸断されてきており、多くの場合その継続性に於いて日本史とは視点に相違があるからです。

 ジョニーディップ主演の「パイレーツ オブ カリビアン」シリーズ、私も好きな映画ですが、昔の海賊モノの映画にはあって、「パイレーツ オブ カリビアン」にはないシーンがあります。あるのかもしれませんが、極めて僅かなものでほぼ印象に残らないシーン、それはあの船の誰がオールを漕いでいるかです。

 海賊船と軍艦の戦闘シーンで、一気に速度を増す為に船体脇から数多の長いオールが延びてきて‥なんてシーン、観たことがあるかと思いますが、昔の海賊映画では、必ず船内の様子が描写されました。薄暗い船内で鎖に繋がれた奴隷が、鞭で打たれながらオールを漕ぐシーン‥‥

 世界史に於いて民族の大移動だったり王朝の変換なり、その都度前民族の文明文化が破壊され更には否定され、生き残っても人とは看做されず奴隷、世界史は奴隷などのネガティヴな側面から目を逸らさない姿勢がないと本質を理解できないと思います。

 話を戻しますが、先進国=歴史が継続した国と仮定して、それらの国々は経験的に壊滅的な争いからは何も生み出さないことを悟り、戦争は避けられない、しかし壊滅的な破壊を避ける為に知恵を絞り國體を維持してきたものと考えられます。

 日本の例などは典型であると思います。

 争いは避けられない。しかしお互いに壊滅的なことは避けなくてはならない。争いにも規範を作る必要がある。又平和を維持する為には力が必要である。それはともすると暴力になる。暴力(権力)を放置すると結果的には自滅する。そのような中から武士道や騎士道が創生されてきました。

 ノーサイドの精神、試合が終われば敵味方なく、お互いを労い称え合う、まさしく武士道、騎士道に通ずるものです。

 オールブラックス先住民族アポリジニに由来するハカなども、これから争いに行く前に士気を鼓舞することだけを目的とせず、敵を認め称える儀礼であることが紹介されましたが、まさに武士道・騎士道です。

 話が変わりますが、ラグビーならではの規範意識があります。

 どんなスポーツにもルールはありますが、ルール(規範)の根拠を何処置くかです。

 法律でもこれを維持するには力による裏付け(根拠)が必要で、法治国家に於いては司法官憲です。法を破れば力をもって罰せられます。

 スポーツの場合は審判、レフェリーとなりますが、ラグビーはレフェリーに絶対的権限を付与しています。如何なるジャッジにも選手は従わなくてはなりません。

 当然他のスポーツも同様ですが、ラグビーの場合、更に顕著であるということです。

 ラグビーのように極めて格闘技の要素を有し、選手は極限まで興奮状態にある中で、モールやラックなどの密集状態でのボールの獲り合いや、タックルの正当性(止むを得ないものかや、危険なものかどうか)、スクラムを故意に崩す危険な行為など、非常に判断が難しく、しかし誰かが何処かで規制しないとエスカレートして更に危険なことになってしまう、よってレフェリーに全権限を委ねる必要があるのです。

 レフェリーの判断が規範の根拠となるということを、選手だけではなく全ての人が周知・共有しているからこそ、ラグビーがスポーツとして成立します。

 今大会の表彰式に先立って審判団が壇上に上がり最高の賛辞を持って労われるなんて、ラグビー以外で観た記憶がありません。レフェリーも大会を通して戦って来たんだと思わせる瞬間でした。

 ラグビーに於ける紳士たる所以は、自国の為、仲間の為、愛するもの全てを守る為に、騎士道、武士道精神を有し、遵法精神の意義を理解し、更には知性教養に裏付けられた品性品格を身に付けた者でないと成立しないことにあり、特にサッカー等(サッカーも大好きです。)で見られるレフェリーのジャッジを不服として大騒ぎするような国に、ラグビーがなかなか普及しない要因の一つと考えることができます。

 今大会はまさに「おもてなし」の言葉に現れているように、歴史に裏付けされた品性品格が未だ残っているだろう日本で開催されたことで、選手は勿論関係者、世界中のサポーターや視聴者のすべてが、人として品性品格を保持することの大切さを思い起こす契機になったことが、世界的評価に繋がったものと考えています。

 大会の最中、台風の為試合が中止になったものの、開催地で被災地でもある岩手県釜石に残り、ボランティア活動に従事したカナダチームの姿に、本当の紳士 本物の騎士道を見た想いです。

 勝つ為には何をしたって良いといった思考の元に 得られた力(権力)は、いずれ必ず己をも滅ぼすことになる‥‥歴史が物語っています。

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 日本が勝ち進む度に、ワールドカップサイトでTシャツを買い続けて、嫁さんからは毎度怒られていましたが、できればもう少しだけ怒られたかったと思うせっちもでした。(どMか?www)

 最後に、日本代表 心の底からありがとう😊